vol.24|育てたいチカラ|「強いメンタル」は本当に必要なのか?
— 自己調整・自己決定・自立という “本当の強さ” —

こんにちは、須賀亮祐です。
今回は「メンタルの育て方」について。
サッカーでも、学校でも、保護者の方との会話でも、“メンタルが強いほうが良い” という言葉はよく耳にします。
でも、この「メンタルが強い」という言葉。日本と海外では、まったく違う意味で使われていることをご存じでしょうか?
そしてその違いは、育て方にも、子どもの未来にも大きな影響を与えます。
今日はその本質を、海外の育成哲学や科学の視点からお伝えしたいと思います。
日本でよく使われる「メンタルが強い」のイメージ
日本で「メンタルが強い」と聞くと、多くの人が次のようにイメージします。
- 怒られても折れない
- 厳しい環境に耐えられる
- 弱音を吐かない
- ストイックに努力できる
- 我慢できる
いわば、岩のように固い心。
こうした文化的背景があるので、「メンタルは鍛えるものだ」という考え方が広がりました。
さて、この“鍛えるメンタル”は科学的にどうなのか?
実はこれ、多くがアドレナリン(興奮系ホルモン)による短期的な成長であることがわかっています。
● アドレナリン成長の特徴
・短時間で力が出る
・「やれ!」と言われると瞬間的に頑張れる
・恐怖・プレッシャー・緊張も原動力になる
・だが長く続かない
・切れた瞬間にどっと疲れる
・心身への負担が大きい
・バーンアウト(燃え尽き)を引き起こしやすい
スポーツメンタルの研究でも、アドレナリン依存の成長は、長期的にはパフォーマンスを下げるという結果が出ています。
実は、「厳しく鍛える=メンタルが強くなる」ではないのです。

海外では「メンタル=整えるもの」
一方、海外の育成現場で “Mental Strength(メンタルの強さ)” と言うと、まったく違う意味になります。
彼らが重視するのは、次の3つ。
① Self-regulation(自己調整力)=気持ちを自分で整えられる力
- 落ち込んだときの立て直し
- イライラした時のコントロール
- 緊張やプレッシャーとの付き合い方
② Self-determination(自己決定)=自分の行動を自分で選ぶ力
- やらされるのではなく、自分で選んだ道を進む
- 他人の評価ではなく、自分の基準を持つ
- 動機が内側から育つ
③ Autonomy(自立・主体性)=自分の力で状況を切り開いていく力
- 問題を自分で解決する
- 逆境を前向きに捉える
- 失敗から学び続ける
これらを総合したのが、海外でいう “メンタルの強さ”。
つまり、“固さ”ではなく“しなやかさ”が強さであるという価値観なのです。
科学的にも“整えるメンタル”が優位
スポーツ心理学では、
「自分で選んだ行動」は幸せホルモン(セロトニン・オキシトシン)が分泌される
「やらされて行動した場合」は アドレナリンが分泌される
という研究結果があります。その違いは大きい。
【自分で選んだ場合】
・前向き
・継続しやすい
・折れにくい
・主体性が育つ
・幸福度が高い
・燃え尽きにくい
【やらされた場合】
・瞬発力は出る
・だが継続しない
・他人の評価に依存
・怒られると動けなくなる
・バーンアウトを起こしやすい
つまり、メンタルは“鍛える”のではなく“整える”ほうが長期的に強くなるというのが科学の答えです。
僕が海外で感じた「本当のメンタルの強さ」
海外で出会った選手たちを見て、強く思ったことがあります。
それは、彼らは逆境に対して「前向きに工夫する力」がずば抜けているということ。
たとえば…
- ミスしても落ち込まない
- 負けていても楽しむ余裕がある
- 問題が起きるほど燃える
- 自分で新しい解決策を探す
- 誰も思いつかない柔軟なアイデアを出す
これは “折れない岩” ではありません。
むしろ、ゴムのようにしなやかに、何度でも立ち上がれる心。
レジリエンス(回復力)と呼ばれ、世界のメンタルトレーニングでは最重要視されています。

なぜ海外ではこの力が育つのか?
これはvol.19ともつながる話ですが、海外にはメンタルを育てる文化的な背景があります。
選択肢が少ない国ほど、サッカーの役割が大きい
多くの地域では、日本のような多彩な習い事があるわけではありません。
- 街のクラブ
- 学校のチーム
- ストリートサッカー
サッカーは “子どもの成長の中心” であり、コミュニティそのものを支える大切な文化。
だからこそ、サッカーは技術を教える場所ではなく、人生を生きる力を育てる場所という考えが根づいています。
だから「整えるメンタル」が重視される
サッカーで学ぶべきは、
- 判断力
- 感情調整
- 仲間との協力
- 問題解決
- 柔軟な発想
- 自己決定
など、“大人になって役に立つ力”。
その根底にあるのが、整えながら進むメンタルの強さです。
まとめ
強いメンタルとは、折れない心ではなく“しなやかに戻ってくる心”
海外の育成に共通するのは、
- 自分で選ぶ(自己決定)
- 自分で整える(自己調整)
- 自分で乗り越える(自立・主体性)
この3つの力です。
これは“才能”ではなく、環境が育てるもの。
そしてもちろん、sardana でもこの力を育てていきたい。
折れない子より、しなやかに立ち上がれる子を。
サッカーを通して、自分で考え、選び、整え、人生を前に進める子どもたちを育てたい。
これは、僕が海外で学んだことを sardanaに込め続けている大切な価値観です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。このブログが、子どもたちの“本当の強さ”を考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。
よかったら「いいね」ボタンやコメントで、感じたことを教えてもらえると励みになります。
※江戸川区で、子どもが自分で考えるサッカーを体験できる sardana の取り組みはこちらから。↓

